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男は自由自在に時を繰り返す能力――ループ――を呪いと評していたのだった。

 

不思議そうな顔をする少女に彼はこう言いました。

 

「いつでも決断を覆し、修正することが可能な能力があるのだから、常に正解で、尚且つ最善でなくてはならない。総べての選択を見つめ直し、悩み続け、今までの積みかさねをなかったことにしても、万物を最善にしなくてはならないはずだ」

まだ少女は首を傾げています。

 

「やれやれ、単純なことだ。出来ることをしないのは、所謂責任放棄じゃないか?」

 

これはループのその先を知る物語。

 

 男は何度でも時を自在に繰り返すことができる力を得ました。
 憧れの対象にすらなる現象を、呪い、と評しました。
 不思議そうに見つめる私に、彼はこう言いました。
 
「呪いだよ。いつでも決断を覆し、修正することが可能な能力があるのだから、常に正解で、尚且つ最善でなくてはならない。総べての選択を見つめ直し、悩み続け、今までの積みかさねをなかったことにしても、万物を最善にしなくてはならない。想像しにくいかな?」
 
 そう言って、彼は少し困った顔をします。私も倣って顔を顰めます。
 二人だけの合図。貴方のことが知りたい、と端的に伝えました。
 これで準備はおしまい。今から私は、彼の言葉から歩みを推測し、想像するためだけに頭を働かせるのです。
 
「単純なことだ。出来ることをしないのは、所謂責任放棄じゃないか?」
 
 事故、天災、殺人。理不尽な現象を知って、覆すことが出来てしまうのが、繰り返すという事。
 それらから逃げ続ける事は難しいはず。
 なぜなら、いつでもやり直すことが可能だから。
 救えるのに行動しなかった、と責め、囁き続けられる。
 しかし、これはあくまで副次的なものだったのでしょう。
 何より、振り返らずにいることが出来なかった。
 結果、男は何度も繰り返すことを選択したのです。
 
「仮に、知りうる全ての不幸を駆ろうとしたとしても、取りこぼしというものがある。災害や戦争というものが起これば、全てを救うことはできない。しかし、それは最善ではない。なら――諦めることはできない」
 
 男は歩み続けたのです。
 ありとあらゆる知識を習得し、鍛錬し、それ等を持ってして、また繰り返すことで不可能を可能にできるはずだ、と。 制限を超えれば、当然、前提条件も変わってしまう。今、不可能なことでも未来なら?
 彼はその可能性を知ってしまったから――呪いだと言えるのです。 
 
「何千、何億、と繰り返せば、永遠と表現して差し支えない時を巻き戻せば、できないことなんて――ないはずだ」
 
 総べての望みが叶う世界。誰もが幸福であるために、全てを救うという理想を叶えるようと、彼は何度も、何度も何度も、繰り返しました。
 でも、私は知っています。
 男は歩みを止めたのです。
 
 それは――。
 

 

 
制作総時間―31時間11分

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時間だけでなく、その過程も、という方は開発日誌もございます。

※さらに詳細なものをゲーム配布ごとに同梱します。

ストーリー

あらすじ

序文

※あらすじの下に、1章の導入部があります。

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